ゴールデンアーチ、つまりマクドナルドの「M」マークは、商標の歴史上最も調査された事例のひとつです。あの黄色いアーチはどこで生まれ、どのように世界規模の商標になったのか。今回は一次情報を追いながらその経緯を解説します。
建築から生まれたロゴ
1952年、フランチャイジーのスタンレー・マースンは、カリフォルニア州フェニックスに建設するマクドナルド店舗のデザインを建築家リチャード・ドナーに依頼しました。ドナーはアーチ型の屋根を左右に配した独特の建物デザインを提案しました。
この「2つのアーチ」を組み合わせると横から見ると「M」の形になることに気づいたのが、のちにロゴ整備を担当したジム・シンドラーです。彼は1962年にこの2つのアーチを組み合わせた「ゴールデンアーチ」を正式なロゴとして提案し、以降マクドナルドのシンボルとして定着します。
商標としての登録
ゴールデンアーチは米国をはじめ世界各国で商標登録されています。
📋 米国商標登録番号:1,366,884(USPTO TSDR)
マクドナルドが保護しているのはゴールデンアーチの形だけではありません。「Big Mac」「Happy Meal」「McFlurry」などの名称、特定の赤と黄色の配色、さらには「Mc」「Mac」を冠した名称全般も商標として管理しています。
「Mc」名称をめぐる法廷闘争
マクドナルドの商標戦略で特に知られているのが「Mc」「Mac」を含む名称への積極的な権利行使です。
代表的な事例が、スコットランドのファミリーレストラン「McMunch」に対するマクドナルドの商標侵害訴訟です。小規模なレストランに対しても同様の訴訟を提起したことで、マクドナルドは消費者団体や一部メディアから批判を受けました。
一方で欧州での「Big Mac」商標は2019年に興味深い展開を見せました。アイルランドのバーガーチェーン「スーパーマック」がEUで提起した取消申請で、欧州知財庁(EUIPO)がマクドナルドの「Big Mac」商標を無効と判断したのです。理由は「登録後5年間以上にわたって十分な使用がなされていなかった」というものでした。この判決はその後の控訴審で争われています。
色彩商標の活用
マクドナルドはゴールデンアーチの形に加え、黄色(パントーン1235C)と赤(パントーン485C)の配色も積極的に商標化しています。
色彩だけを商標として登録するのはハードルが高く、「その色を見るだけでブランドを識別できる」という識別力が必要です。マクドナルドの黄と赤の組み合わせは、ファストフード業界においてその基準を満たしていると認められています。
ゴールデンアーチが持つ経済的価値
インターブランドが毎年発表するグローバルブランドランキングでは、マクドナルドは常に上位に位置しています。ゴールデンアーチはそのブランド価値の象徴であり、世界100か国以上で認知される商標です。
わたしがこの事例で注目するのは、「建築のデザインがロゴになり、ロゴが商標になる」という転換プロセスです。ゴールデンアーチはもともと建物の一部でした。それが識別標識として機能するようになり、最終的に法的保護を受ける知的財産になった。この流れはブランドデザインの歴史の中でも特に面白い事例です。
【出典・参考リンク】
本記事は公開情報をもとにした調査・解説であり、法的アドバイスではありません。

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