米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は2026年3月31日、10Tales, Inc.(テンテールズ)がTikTok Inc.およびByteDance Ltd.(バイトダンス)を相手取って提起した特許権侵害訴訟において、原審(カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所)の判断を支持し、係争特許の請求項1を特許法第101条のもとで特許非適格と確認する判決を下した(事件番号:24-1792)。レイナ判事が執筆した本判決は、ソーシャルネットワーク情報に基づいてコンテンツを個人化するという概念がアリス判決の枠組みにおける「抽象的アイデア」に該当し、請求項が特許適格性を満たさないと明確に判断したものである。
対象特許は米国特許第8,856,030号(’030特許)であり、ソーシャルネットワーク情報を取得してユーザーに提示するコンテンツを当該情報に基づいてカスタマイズまたは個人化するシステムに関するものである。10Talesはテキサス州西部地区連邦地方裁判所に訴えを提起したが、その後カリフォルニア州北部地区に移送された。地方裁判所は当初、TikTokの訴訟却下申立(Rule 12(b)(6))を退け、請求項解釈の手続を経て改めてTikTokのRule 12(c)に基づく判決申立を検討した。最終的に地方裁判所は請求項1が特許法第101条のもとで特許非適格であると判断し、TikTok・ByteDanceに有利な判決を下した。10Talesが連邦巡回区控訴裁判所に上訴した。
CAFCはアリス判決が定立した二段階テスト(Alice Corp. v. CLS Bank International、573 U.S. 208(2014年))を適用した。ステップ1では、請求項1が「抽象的アイデア」に向けられているかを検討する。10Talesは請求項1が「取得したソーシャルネットワーク情報に基づいてコンテンツのストリームを修正すること」に向けられており、十分に具体的な実装を要求していると主張した。しかしCAFCはこの主張を退け、請求項1は達成すべき結果を記述しているに過ぎず、それを達成するための手段については何ら具体的な特定を行っていないと判示した。裁判所は「請求項はそのアイデアそのもの——ユーザーに関する情報に基づいてユーザーに個人化されたコンテンツを提示すること——に向けられている」と述べた。
ステップ2では、請求項が「発明的概念(inventive concept)」を含むかを検討する。10Talesは二つの要素を発明的概念として主張した。第一は、外部のソーシャルネットワーク情報を取得するという限定であり、これは従来技術に存在しないと論じた。しかしCAFCは、新規な抽象的アイデアの請求項は依然として抽象的アイデアに過ぎないとし、第101条における発明的概念は第102条(新規性)とは概念的に区別されると明示した。第二は、ルールに基づく置換処理(rule-based substitution)という限定であるが、CAFCは具体的な請求項解釈が示されていない状況ではこの要素が発明的概念として機能する根拠がないと判断した。
本判決は、生成AI技術の普及を背景として改めて注目を集めているコンテンツ個人化・推薦アルゴリズムに関する特許の適格性問題に一石を投じる。ソーシャルネットワーク情報を活用してユーザーに最適なコンテンツを提示するという発想は、現代のSNSプラットフォームの根幹をなすが、当該技術を一般的な言葉で特許化しようとする試みは、アリス判決以降の判例法のもとで繰り返し壁に当たっている。本件の請求項1は「何を達成するか」を記述するのみで、「どのように達成するか」の技術的特定を欠いていたことが、特許非適格認定の核心にある。
TikTokとByteDanceは近年、特許訴訟の被告となるケースが増加しており、本件はその一つである。なお、同時期に別途報道された「Tianma Microelectronics事件に基づくIPR取消」はTikTokが申立人として関与した別個の手続きであり、本件(10Tales対TikTok)とは当事者の立場も法的争点も異なる。本件における結論は、TikTokにとって特許非適格を理由とした訴訟却下という勝訴を意味する。
連邦最高裁判所は2014年のアリス判決以降、ソフトウェアおよびビジネスモデル特許の適格性について明確な基準を提示できていないという批判が特許実務界では根強い。議会においても第101条の改正論議が繰り返されているが、本判決のように、広い文言でコンテンツ個人化・推薦を請求した特許が第101条のもとで退けられる傾向は当面続くとみられる。AIと推薦システムの融合が加速する中、出願人は具体的な技術的実装——データ取得の仕組み、推薦アルゴリズムの具体的構成、UI/UXとの統合方法——を明細書および請求項に明示することがますます重要になる。
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パテント探偵社 編集部
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