中国国家知識産権局、2026年知的財産行政保護業務計画を発表——IP輸出管理の強化と越境知財規制の新動向

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中国国家知識産権局(CNIPA: China National Intellectual Property Administration)は2026年4月、2026年知的財産行政保護業務計画(以下「2026年業務計画」)を公表した。同計画において最も注目される政策方針は、中国商務部との連携を強化し、「技術輸出における知的財産権の海外移転を厳格に管理する(strictly manage the transfer of intellectual property rights abroad in technology exports)」という方針の明記である。この動向は、知財の越境移転をめぐる国際的な規制強化の流れと符合するものであり、日米欧の企業が中国における知財戦略を再検討するにあたって重要な背景をなす。

2026年業務計画が策定された背景には、中国の外国貿易法改正(2026年3月1日施行)がある。同改正では知的財産権に関する独立した章が新設され、知財権侵害に対する貿易制裁を導入している。CNIPAはこの法制度整備と連動する形で、知財の輸出管理に関する行政執行力を強化する方針を打ち出した。具体的には、「技術輸出に係る知財権の海外移転について、法律に従い厳格に管理するよう商務部との調整を強化する」と明記されており、中国国内で蓄積された技術資産の対外移転に対する規制監視が強まることを示唆している。

同業務計画はIPの行政保護にとどまらず、新興技術分野における知財保護の強化も主要施策として掲げている。人工知能(AI)分野における知財制度の整備が特に重点事項として位置づけられており、AI関連発明の特許保護基準の見直しや、AI生成コンテンツに係る著作権問題への対応も視野に入れている。CNIPAが2026年3月に公表した立法業務計画においても、集積回路レイアウトに関する規則改正の推進や、商標法改正の加速が盛り込まれており、2026年業務計画との政策的一体性が確認できる。

悪意のある商標先取り(malicious trademark squatting)および誠実性を欠く特許出願への対応強化も2026年業務計画の重要な柱である。CNIPAは2026年理事長会議の業務報告においても、「誠実性に反する特許出願および悪意のある商標先取りの取り締まりを強化する」と宣言しており、中国で事業を展開する外資企業が既知のブランドや技術について商標・特許を先取りされるリスクへの対策が引き続き課題となっている。

第15次5ヵ年計画(2026〜2030年)の策定と並行して進む2026年業務計画は、中国の知財政策が「量的拡大」から「質的向上」へとシフトする方向性を示している。2025年のWIPO PCT年次統計によれば、中国のPCT国際出願件数は73,718件(前年比5.3%増)に達し、米国の52,617件を大きく上回って首位を維持している。この出願件数の優位を質の高い権利行使・権利保護へと転換することが、2026年以降の中国知財政策の主要課題である。

日米欧の企業にとって、今回の政策動向が持つ実務的含意は大きい。中国子会社や合弁会社を通じて蓄積した技術・特許資産を国外に移転・ライセンスする際に、商務部との協調という新たな行政的審査層が加わる可能性がある。特に半導体・AI・バイオ分野の先端技術については、輸出管理レジームとの関係も含め、中国における知財移転手続の法務リスクを再点検することが求められる。なお、CNIPAによる2026年業務計画の全文はCNIPA公式英語サイトにおいて公開されている。

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パテント探偵社 編集部

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