米国連邦巡回控訴裁判所は2026年4月2日、発明者が見つからない場合に特許は無効となるという判例を確定させた。Fortress Iron, LP v. Digger Specialties, Inc.事件の判決により、特許法第256条(b)の要件を満たさないオミッションは、訂正不可能な瑕疵として機能することが明示された。
事件の概要は以下の通りだ。Fortress Iron社は、「垂直ケーブルレール障壁」(Vertical Cable Rail Barrier)に関する米国特許第9,790,707号および第10,883,290号を保有していた。これらの発明は、Fortress社の従業員2名と品質管理提携先である中国企業・Quan Zhou Yoddex Building Material Co., Ltd(YD)の従業員2名によって共同開発されていた。訴訟の過程で、Digger Specialties社がこの事実を指摘し、YD従業員のHua-Ping Huang氏とAlfonso Lin氏を発明者として追加するよう要求した。
Fortress社は第256条(a)に基づいて訂正を試みた。Lin氏は追加可能だったが、Huang氏は所在不明のため追加できなかった。重要な点は、第256条(b)は「関係のある全当事者」に対する通知と聴聞機会を要求しているということだ。Huang氏が見つからないため、この要件を満たすことが不可能だったのである。
連邦巡回裁判所は、この状況において特許は無効であると判示した。裁判所の論理は厳密だ。第256条は、訂正がそれ以外の条件で「非反対的」(non-prejudicial)であるかどうかにかかわらず、「関係のある全当事者」への通知を要求している。従って、オミットされた発明者が見つからず、第256条(b)の要件を満たすことができない場合、特許は無効となる。これは判例法としてのマイルストーンである。
実務への影響は大きい。第一に、共同発明に関わる全員の特定と把握は、特許出願時点でのクリティカルなタスクとなる。共同開発プロジェクトやM&A後の発明者確認プロセスは、より厳格な追跡体制が必要だ。第二に、訴訟リスク管理の観点から、特許ポートフォリオレビュー時に発明者の正確性確認が標準的な監査項目になるべきだ。
また、本判決は国際出願にも波及する。Patent Cooperation Treaty(PCT)出願やPCT後の各国移行出願で発明者情報が異なる場合、後々の審査過程で同じ問題が生じる可能性がある。特に多国籍企業による国際研究開発の場合、発明者情報の一貫性管理がポートフォリオ価値を左右することになった。
Fortress Iron判決は、特許の有効性を確保するための「行政的厳密性」の重要性を改めて浮き彫りにしている。技術的優位性や商業的価値がいかに高くても、発明者の正確性という基本的要件を欠くと、特許権全体が失われるリスクを孕んでいるのだ。
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パテント探偵社 編集部
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