大手出版社ペンギン・ランダムハウスが2026年4月、OpenAIを相手方としてドイツの裁判所に著作権侵害訴訟を提起した。ChatGPTが同社出版の児童文学シリーズから実質的に物語を再現する事実を根拠としたもので、欧州におけるAI著作権訴訟の新たな局面を示すものである。
本事案の具体的内容は次のとおりである。Ingo Siegner作の児童図書シリーズについて、ChatGPTが訓練データから学習した結果、原著作物の物語構成・キャラクター設定・会話パターンを組み合わせて再現するテキストを生成できるようになったと指摘している。ペンギン・ランダムハウスは、この再現性が無許諾の学習データ利用に基づくものと主張し、著作権侵害および不正利得の返還を求めている。
欧州著作権法におけるAI学習の取扱いは、米国と大きく異なる。EU著作権指令(Directive 2019/790)は、テキスト・マイニングの場合でも、著作権者が事前に異議を唱えることで学習利用を禁止できる仕組みを導入している。このため、OpenAIが著作権者の明示的な同意なく学習を行った場合、欧州法廷では侵害認定の可能性が米国よりも高い。
ドイツで訴訟が提起された戦略的理由としては、ドイツ法の著作権保護が比較的強固であること、欧州全体への波及効果が期待できることなどが考えられる。
本訴訟の法的争点は、ChatGPTの学習プロセスにおいて著作権侵害的な複製が発生しているか、変成的利用の法理が欧州法廷において適用されるか、AI企業に対する損害賠償額の算定方法などに集約される。
ドイツ裁判所の判決は、欧州全体における著作権侵害とAI学習の関係性について重要な判例を形成する可能性がある。欧州における生成AIのビジネスモデル全体の再構築が迫られる見通しである。
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パテント探偵社 編集部
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