連邦第11巡回区控訴裁判所は2026年5月5日、Great Bowery Inc.対Consequence Sound LLC事件において、フロリダ南部地区連邦地裁が下した略式判決を取り消し、写真家アニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)による「スター・ウォーズ」撮影現場の写真を巡る著作権侵害訴訟をGreat Bowery社に有利な形で復活させた。リーボヴィッツがアーティスト契約上保持していた一定の権利が、Great Bowery社の独占的ライセンシーとしての適格を排除するという地裁の判断は、著作権法の理解として「正確とはいえない」と第11巡回区は判示した。
事件の背景——「スター・ウォーズ」撮影現場の写真
本件で問題となった写真は、リーボヴィッツが「スター・ウォーズ」シリーズの新作撮影現場で撮影したものであり、Vanity Fair誌への掲載のために制作された。リーボヴィッツの写真エージェント・ライセンス管理会社であるGreat Bowery社は、リーボヴィッツとのアーティスト契約に基づき、これらの写真の独占的ライセンシーとして第三者へのライセンスおよび著作権侵害訴訟提起の権限を有していた。
音楽メディア・コンテンツ企業であるConsequence Sound LLCが当該写真をオンライン上で投稿・利用したことから、Great Bowery社は著作権侵害訴訟をフロリダ南部地区連邦地裁に提起した。
原審の判断——「リーボヴィッツが権利を一部保持しているため適格欠如」
地裁はConsequence Sound側の略式判決申立を認容した。地裁の判断の核心は、リーボヴィッツとGreat Boweryのアーティスト契約においてリーボヴィッツが一定の権利を保持していたために、Great Bowery社が問題となった写真の「独占的ライセンシー(exclusive licensee)」として原告適格を有するとは認められない、というものであった。
米国著作権法上、著作権侵害訴訟を提起する原告適格は、著作権者または「特定の独占的権利の独占的ライセンシー」に与えられる(17 U.S.C. § 501(b))。原告適格の存否は、契約条項の解釈と、原告が実質的に独占的権利を承継しているかの判断に依存する。地裁は、リーボヴィッツが何らかの権利を保持していた事実から、Great Bowery社の独占性が損なわれているとして適格を否定した。
第11巡回区の判断——「著作権法の理解が正確とはいえない」
第11巡回区は地裁の略式判決を取り消し、本件をフロリダ南部地区に差し戻した。控訴裁判所は、リーボヴィッツが保持していたとされる権利が、Great Bowery社が当該写真の独占的ライセンシーであると認められることを妨げるものではない、と判断した。
意見書は、地裁の「著作権法の理解は正確とはいえなかった(not quite right)」と述べた。著作権の独占的ライセンシーの地位は、著作権者が一切の権利を留保せずに譲渡することを要件とするものではなく、著作権者がライセンス対象から外した特定の用途や目的に関する権利を保持していたとしても、ライセンシーがライセンスされた範囲において独占的権利を有することは妨げられないというのが、第11巡回区の判示である。
言い換えれば、独占性の判断は、ライセンス契約により与えられた特定の権利が当該ライセンシーに対して独占的に付与されているかという問いであり、著作権者が他の用途で権利を残しているかという問いではない。
差戻しと今後の争点
本件はフロリダ南部地区に差し戻され、Consequence Sound社が当該写真を投稿した行為がGreat Bowery社の独占的ライセンスを侵害するかについて本案審理が行われることとなった。
差戻し審で問われる争点は、(1) Great BoweryとリーボヴィッツのアーティスT契約においてGreat Boweryに付与された権利の正確な範囲、(2) Consequence Soundの行為が当該権利範囲に侵害的に該当するか、(3) フェアユース(公正使用)抗弁が成立するか、(4) 損害賠償額、などとなる見込みである。
実務上の意義
本判決は、写真家・アーティストとそのエージェント・ライセンス管理会社との契約関係において、独占的ライセンシーの原告適格をめぐる判断基準に重要な指針を与える。デジタル媒体での画像利用が拡大する中、契約上のライセンシーが著作権侵害を訴追する場面は増加しており、契約条項の起草と解釈が訴訟戦略に直結する。
地裁の判断、すなわち「著作権者が何らかの権利を保持していれば独占性が損なわれる」という解釈は、写真エージェントモデルそのものの法的基盤を脅かしかねないものであった。アーティスト本人と複数の用途を分けて契約することはエージェント業界では一般的であり、本判決はそうした商慣行と適格法理との調和を再確認する効果を持つ。
リーボヴィッツの作品はVanity FairやVogueなどの主要誌で長年掲載され続けており、その肖像写真の管理体制は写真業界における契約モデルの代表例とされる。本件の差戻し審の結果は、写真エージェント業界全体のライセンス管理戦略に影響を与える可能性がある。なお、本件は1996年・1998年のLeibovitz v. Paramount Pictures事件(フェアユースとパロディに関する著名判決)とは別個の事件であり、論点も異なる。
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パテント探偵社 編集部
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