連邦第4巡回区控訴裁判所は2026年5月5日、Malone対米国特許商標庁(USPTO)事件(事件番号24-1706)において公表意見を出し、USPTOが特許審判部(PTAB)の行政特許判事(APJ)の合議体構成(paneling)に関する文書を、情報公開法(FOIA)の予備的・審議的文書免除規定(Exemption 5)に基づき非開示にできるとした原審判断を維持した。本判決は、IPR(当事者系レビュー)合議体の判事構成に対する透明性確保の試みを退けるものであり、PTABの審議手続をめぐる長年の論争に新たな先例を加える。
事件の背景——Centripetal Networks IPRにおける合議体再構成
本件はUS Inventor所属のジョシュ・マロン(Josh Malone)氏が、Palo Alto NetworksがCentripetal Networksの特許権を争うために提起したIPR手続におけるAPJ合議体の再構成(reconstitution)に関する文書をFOIAで求めた事件である。
マロン氏が請求したのは、当初のAPJ合議体、当該合議体内の一名のAPJが当事者参加(joinder)したCiscoの株式を保有していたことが判明した後の合議体再構成、そして再構成された合議体がCentripetalの当該APJの忌避申立を退けた決定、これらに関する文書である。
USPTOは1,500件の文書を開示した一方で、PTAB決定の編集・審査各段階におけるレッドライン版(修正履歴付き)や、当該草案について議論したPTAB職員間の電子メールを非開示とした。USPTOはこれらの文書が予備的(predecisional)かつ審議的(deliberative)な文書としてFOIA第5項免除(5 U.S.C. § 552(b)(5))の対象であると主張した。
原審の判断——「審議的文書の典型例」
マロン氏は東部バージニア地区連邦地裁に提訴し、非開示文書は合議体APJと非合議体APJ(nonpanel APJ)の間における違法な一方的通信(ex parte communication)であり、Exemption 5の対象とはならないと主張した。
地裁は略式判決でUSPTOに有利な判断を下し、機関内部のコメント付きで回覧された審判草案は「まさに審議的文書と認められる文書の典型例」であるとした。地裁はまた、行政手続法(APA)および合衆国憲法第5修正のデュープロセス条項に基づくマロン氏の請求についても、FOIAの文脈においてそのような請求が認められる法的根拠の説明がないこと、およびマロン氏が原告適格を欠く可能性があることを理由に却下した。
第4巡回区の判断——APJ間通信は「ex parte」ではない
第4巡回区はUSPTOの非開示文書がカテゴリーとして予備的かつ審議的であると認定するにあたり、ほとんど困難を見出さなかった。IPR請求の解決を提案するPTAB審判草案、ならびに非合議体判事のコメントおよび提案修正は、合議体が最終意見に到達するのを支援するものであり、明らかに予備的であると判決は述べた。さらに、機関の方針ではない推奨や個人的見解を含む草案の性格自体が、当該文書が審議的でもあることを示すと認定した。
非合議体APJへの通信は審議的ではないとするマロン氏の主張について、第4巡回区は「司法の審議に対するあまりに狭い見解」を取るものだと退けた。同裁判所は、規則37 CFR § 43.5(b)および37 CFR § 43.4(b)–(c)が非合議体APJへの草案回覧を認めつつ、合議体APJに任意の入力を受け入れる完全な裁量を与えていることを指摘し、これは司法部門で広く採られている実務と類似するとした。当該実務はPTABの標準業務手順書において「審判部の審議過程の一部」と明示的に位置づけられている。
第4巡回区はマロン氏のex parte通信に関する主張が、当該用語の根本的な誤解に基づくと判断した。ex parte通信は通常、相手方当事者の不在のまま一方の当事者が決定者と行う通信を指すと定義される。合議体APJの間の通信、あるいは合議体APJと非合議体APJの間の通信は、これと同種の一方的通信ではないと判決は述べた。USPTOのex parte通信規則も同用語の伝統的定義を変更するものではないため、本件における通信はExemption 5の目的における審議的通信に該当する。
FOIAは政策の付帯的攻撃に使用できない
第4巡回区はさらに、非開示文書が政府の不正行為(government misconduct)を明らかにする可能性があるというマロン氏の主張は、FOIAにおけるExemption 5の適用とは無関係であると結論づけた。マロン氏の「当該実務自体が政府の不正行為を構成する」という主張は法的根拠を欠くと判断され、加えて、FOIA請求は文書の作成・開示に限定され、より広範な機関政策の合法性または合憲性に対する付帯的攻撃(collateral attack)の手段とすることはできないと判決は明言した。
実務上の意義
本判決により、PTABの草案回覧を含む合議体内外のAPJコミュニケーションの透明性をFOIA経由で確保しようとする戦略は、実質的に閉ざされた。PTAB手続の正当性を疑問視する発明者団体や中小特許権者にとっては大きな打撃である一方、USPTOにとっては内部審議過程の保護を確保する重要な勝利となる。
本判決はまた、APJ合議体の再構成および利益相反の取扱いに関する透明性論争において、内部草案や職員間電子メールがFOIA上保護される範囲を明確化した点で先例価値を持つ。Cisco株式保有が判明したAPJを巡る同事案そのものは、PTAB運営の透明性をめぐる象徴的論点であり続けてきた。今回の判決はその透明性確保の経路の一つを閉じることになる。
マロン氏は米国発明者連盟(US Inventor)の活動家として、2017年に銃口に取り付けるおもちゃのバンジー紐特許「Bunch O Balloons」をめぐる訴訟で広く知られる発明者であり、PTABの運用改革を訴える運動の中心的人物の一人である。本件はそうした運動の一環として位置づけられるが、APJ合議体の運営の中核に対する法的挑戦としては、別の経路を探る必要が生じたかたちとなる。
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パテント探偵社 編集部
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