知財高裁、ブロード研究所のCRISPR特許を有効と認定:JPO無効審決を覆し優先権主張を認める

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日本の知的財産高等裁判所(知財高裁)は2026年4月14日、ブロード研究所(Broad Institute)およびマサチューセッツ工科大学(MIT)・ハーバード大学が保有するCRISPR関連特許の有効性を認める判決を下した。知財高裁は、特許庁(JPO)が下した同特許の無効審決を取り消し、ブロード研究所側が先の米国出願を優先権の基礎として主張できると認定した。これにより、日本におけるCRISPR特許をめぐる権利帰属争いは新たな局面を迎えた。

CRISPRゲノム編集技術の特許権帰属をめぐる争いは、カリフォルニア大学(UCバークレー)およびジェニファー・ダウドナ博士らのグループと、ブロード研究所・MIT・フェン・チャン博士らのグループとの間で世界各地で展開されてきた。両者はそれぞれ、CRISPR-Cas9技術の異なる適用範囲について特許を取得しようとしてきた。

日本においては、韓国のバイオテク企業ToolGenがJPOに対してブロード研究所らの特許の無効審判を請求した。JPOは優先権移転に関する手続き上の問題を根拠として、ブロード研究所らが先の米国出願を優先権の基礎として主張できないと判断し、同特許を無効とする審決を下していた。

MLexの報道(2026年4月14日)によれば、知財高裁はこのJPOの判断を覆し、ブロード研究所らが当該米国出願への優先権を適法に主張できると認定した。裁判所は、優先権移転に関するToolGen側の異議申立を採用しなかった。

本判決は、CRISPR特許争いの国際的な文脈に位置づける必要がある。米国では連邦巡回控訴裁判所(CAFC)が特許審判部(PTAB)によるインターフェアレンス手続きの結果を支持する形で、真核細胞(ヒト・動物細胞)へのCRISPR適用についてはブロード研究所側の特許を有効と認める判断を示してきた。欧州では欧州特許庁(EPO)が一部のブロード研究所特許に対する異議申立を認め、取り消しを命じる決定を下した案件も存在する。日本の知財高裁による今回の判決は、ブロード研究所側の主張を支持するという意味で米国の方向性と整合する結果となった。

CRISPR技術は遺伝子治療・農業・工業用途など幅広い分野で活用が進んでいる。日本の特許法制において誰がCRISPR基盤技術の権利を保有するかという問題は、同技術を商業化しようとする企業のライセンス戦略に直接影響する。国内のバイオ医薬品企業・農業技術企業・研究機関は今回の判決を受けて、自社が利用する技術の権利関係を改めて確認する必要が生じる可能性がある。

ToolGenは今回の知財高裁判決に対し、最高裁判所への上告が理論上可能であるが、その場合は法律問題に限定された審理となる。また本判決はあくまでも特許の有効性に関するものであり、当該特許が具体的な製品・研究行為に対して侵害を及ぼすかどうかは別途の判断を要する問題である。

今回の判決が確定すれば、ブロード研究所らは日本市場においてCRISPR技術の核心的な特許権を保持することになる。日本国内でCRISPR技術を用いたバイオテク研究・事業化を行う企業は、ブロード研究所との間でライセンス契約の検討を迫られる場面が増える可能性がある。なお、これまでの日本における経緯の詳細は各種法律メディアでも詳報されている。

CRISPRをめぐる特許戦争は、単一の技術領域において世界の主要特許庁と裁判所がそれぞれ異なる判断を示してきたという点で、国際的な特許制度の複雑性を示す典型事例として注目されている。知財高裁の今回の判断はその複雑な地図の日本部分を塗り替えるものとして、国内外の知財実務家から関心を集めている。

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パテント探偵社 編集部

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