連邦巡回区控訴裁判所、Nesarikar対USPTOで本人訴訟を棄却維持――マイクロエンティティ資格否認とArticle III原告適格

知財ニュースバナー 知財ニュース

米連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は2026年5月12日、Nesarikar対USPTO事件において、マイクロエンティティ(micro-entity)資格を否認された発明者らによる本人訴訟(pro se)の棄却を支持した。Taranto判事、Hughes判事、Cunningham判事による全員一致の判決は、発明者らが提出した書面に基づき出願に対する所有権利益を立証できておらず、合衆国憲法第三編に基づく原告適格(Article III standing)を欠くと判断した。

事件の経緯は次のとおりである。Ashlesha、Anika、Abhijit Nesarikarの3氏は、2022年12月に米国特許出願第18/069,288号(’288号出願)を提出した。提出時、3氏は35 U.S.C. § 123に基づくマイクロエンティティ資格を主張し、所定の出願手数料の80%減額を受ける手続を取った。マイクロエンティティ資格は、先行する4件を超える特許出願に発明者として記載されていない者に限られるが、過去の雇用に基づく譲渡義務がある出願は同カウントから除外される。

USPTOは2024年4月、Nesarikar氏らに対し、彼らが少なくとも5件の先行出願に名を連ねているためマイクロエンティティ認定が誤りであるとの通知を発した。Nesarikar氏らは雇用に基づく譲渡義務例外を援用し、過去の出願および’288号出願自体について、過去の雇用契約に基づく譲渡義務があったと主張した。しかしUSPTOからの複数回にわたる追加資料要請に対し、Nesarikar氏らは実際の譲渡契約書、契約条項、その他の裏付け証拠を一切提出しなかった。USPTOは最終的にマイクロエンティティ資格を認めず、正規手数料の納付を条件として審査を停止し、納付が行われないまま2025年2月に放棄通知を発した。

Nesarikar氏らは2025年10月、テキサス州東部地区連邦地裁にUSPTOを相手取って提訴し、行政手続法(APA)違反およびペーパーワーク削減法(Paperwork Reduction Act)違反を主張するとともに、マイクロエンティティ資格の認定を命じる差止命令を求めた。USPTOは連邦民事訴訟規則12(b)(1)に基づき、被告適格欠如を理由とする却下申立を提出した。地裁はNesarikar氏らが「’288号出願に対するいかなる権利」も維持していることの立証責任を果たしていないとして、訴えを瑕疵なしで却下した。

CAFCはこれを支持し、訴答段階での立証責任が満たされていないと判断した。判決は、訴状に添付された書類は訴答の一部として扱われると指摘したうえで、Nesarikar氏らが繰り返し主張した「’288号出願の譲渡義務」が原告適格主張にとって重要な要素となると述べた。控訴審は、Nesarikar氏らの主張が「想定される譲渡義務の性質に関する結論的な記述」にすぎず、譲渡契約の条項、譲渡先、契約の発効時期や締結時期さえ特定する試みもないまま立論されていると指摘した。

発明者の所有権推定をめぐる議論についても、CAFCは原則を確認したうえで本件への適用を否定した。判決は、連邦最高裁が「これと異なる合意が存在しない限り、雇用主は被用者の発明に権利を有しない」と認めてきた点を確認しつつ、Nesarikar氏ら自身がUSPTOに対し「異なる合意」の存在を積極的に表明していた以上、所有権推定は本件では機能しないと判示した。

Nesarikar氏らはまた、他の特許出願に対する所有権利益や、評判侵害(reputational harm)といった非所有権的利益も独立して原告適格を支えうると主張した。CAFCはいずれの主張も退けた。他出願に対する所有権利益は訴状自体で提起されていなかったため、地裁が考慮しなかったことに誤りはない。評判侵害論は治安判事の報告書提出後にはじめて持ち出されたものであり、放棄されたとみなされる。判決は、発明者の名誉回復を求める発明者性訂正訴訟では経済的影響を伴う具体的な評判利益が原告適格を支えうるが、本件では具体的な評判侵害の主張がそもそも存在しないと述べた。

CAFCは最終的に、’288号出願に対する認識可能な利益(cognizable interest)を欠く以上、出願手数料紛争を超える独立した不利益も存在せず、Article III原告適格に必要な具体的損害は立証できないと結論づけた。判決は瑕疵なしの却下であり、Nesarikar氏らが所有権利益を十分な具体性をもって再構成できる場合には再提訴の余地が残されている。

実務上の含意は、マイクロエンティティ資格申請における立証責任の重さである。雇用ベースの譲渡義務例外を援用する場合、USPTOおよび裁判所いずれの段階でも、譲渡契約書または契約条項の明示的な提示が事実上の前提となる。マイクロエンティティとスモールエンティティの料金差は限定的であり、立証リスクと費用便益のバランスを慎重に検討する必要がある。

この記事について

パテント探偵社 編集部

知的財産の世界で起きている出来事を、ジャーナリズムの手法で報道・分析する独立メディア。特許番号・法的根拠・当事者名を正確に記述しながら、専門家以外にも読みやすい記事を届けています。掲載内容は法的アドバイスではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました