Chrome Hearts、ニール・ヤング氏のバンド「The Chrome Hearts」に対する商標訴訟を自主取下げ。著名人ブランドと音楽活動の名称衝突をめぐる係争が終結

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米高級ジュエリー・アパレルブランドChrome Heartsは2026年5月14日、カナダ系米国人ミュージシャンのニール・ヤング氏および同氏のバックバンド「The Chrome Hearts」のメンバーを被告とする商標侵害訴訟を、自主取下げ(voluntary dismissal)の形で取り下げた。訴訟は前年に提起されていたもので、Chrome Heartsはヤング氏が2024年から「The Chrome Hearts」名義で公演・物販活動を行っていることを問題視していた。BillboardおよびRolling Stone等の音楽業界誌が同日付で報じた。

Chrome Heartsの提出した取下書は、和解合意に基づくものか単純な訴え取下げかを明らかにしていない。ただしヤング氏側はバンド名称の使用を継続する方針を示しており、「The Chrome Hearts」名義のライブアルバムを今月後半にリリースし、2枚目のスタジオアルバムも収録を終えている。

原告ブランドの主張

Chrome Heartsは1988年にロサンゼルスで創業されたジュエリー・革製品・アパレルブランドで、銀製アクセサリーと十字架モチーフを特徴とする。同社は1988年から「Chrome Hearts」を商標として使用してきたとし、ヤング氏のバンドが同一名称を使用することは、アパレル・ジュエリー・付属品の各分野で同社が保有する登録商標を侵害し、市場における混同の可能性を生じさせると主張していた。

具体的に問題視されたのは、ヤング氏らが「Neil Young and the Chrome Hearts」と表記された関連商品(マーチャンダイズ)の製造・販売を行っていた点である。アーティスト名義の物販はライブツアーやレコードリリースに伴う重要な収益源であり、ファッションブランドのChrome Heartsはこの領域での衝突を懸念していたとされる。

「バンド名」と「ファッションブランド」の名称衝突

音楽活動における名称とアパレル系登録商標の衝突は、米国商標法上、しばしば論点となってきた。米国商標法では、商品・サービスの類似性、需要者層の重なり、混同の可能性などを総合考慮して侵害の成否を判断する。「Chrome Hearts」の場合、衣料品・装身具(25類)と興行・娯楽サービス(41類)は伝統的には別区分だが、アーティストグッズはアパレル区分にまたがるため、競合関係が生じやすい。

近年ではマーチャンダイズの拡大によって、音楽アーティストとアパレルブランドの境界が曖昧化している。Travis Scott、Kanye West、BTSなどはアパレル領域に踏み込み、逆にChrome Hearts、Supreme、Off-Whiteなどはミュージシャンとのコラボや音楽イベントへの関与で著名性を獲得してきた。

ニール・ヤング氏側の対応と今後

1945年生まれのニール・ヤング氏は、ロック殿堂入りを2度果たした著名ミュージシャンで、「Heart of Gold」「Old Man」などのヒット曲で知られる。同氏は2024年に「The Chrome Hearts」を新たなバックバンドとしてデビューさせており、訴訟提起後もバンド名の変更を行わなかった。

取下げの背景については当事者・代理人とも詳細を公表していないが、ファッションブランド側が著名ミュージシャンとの長期的な係争による評判リスクと、エンタテインメント業界の慣行(バンド名は楽曲タイトル等から自由に着想される)を考慮した可能性が指摘されている。

本件取下げにより、商標権者側の追加的な権利行使(商標審判部での取消手続、別管轄での提訴)が行われない限り、ヤング氏らは「The Chrome Hearts」名義の音楽活動と関連物販を継続できる。なお、自主取下げは原則として原告が将来再提訴する権利を留保するか否かを示すものであり、両者間で長期的な棲み分けが合意されたかは現時点で不明である。

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パテント探偵社 編集部

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