米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は2026年4月23日、NantWorks LLC対Niantic, Inc.事件(事件番号24-2216)において、NantWorksが保有する拡張現実(AR)技術特許2件のクレームが抽象的アイデアに向けられており、35 U.S.C. § 101(特許適格性)の要件を満たさないとの原審(カリフォルニア北部地区連邦地裁)判断を支持した。本件は、Nianticの代表的ARゲーム「Pokémon GO」および「Harry Potter: Wizards Unite」の基盤技術をめぐるものである。本意見はCunningham裁判官が執筆した非先例的(nonprecedential)判決である。
特許の概要と訴訟の経緯
NantWorksは、米国特許第10,664,518号(以下「’518特許」)および第10,403,051号(以下「’051特許」)の各クレームをNianticが侵害したと主張し、2020年に提訴した。両特許はAR環境において位置情報や周囲の文脈情報に基づいてコンテンツオブジェクトの表示を制御する技術に関する。
地裁は、両特許のクレームがAlice Corp. v. CLS Bank International, 573 U.S. 208(2014)の2ステップテストの下で抽象的アイデアに向けられており、特許不適格であると判断した。NantWorksはCAFCに控訴した。
CAFCの判断:’518特許——「テッセレーションタイル」は抽象的アイデアの一部
‘518特許のクレームについて、地裁はそのクレームが「位置に関する情報を受け取り、その情報に基づいて素材を表示する」という抽象的アイデアに向けられていると判断した。Aliceステップ2の分析においても、特許適格性を与える発明的概念(inventive concept)は存在しないと結論づけた。
NantWorksは控訴審で、地裁がクレームを過度に単純化しており、「エリアデータベースの使用、テッセレーションタイル(tessellated tiles)、タイルサブエリア、興味領域の使用・焦点化」といった構成要素が発明的概念を提供すると主張した。しかしCAFCは、これらの特徴は地図上のエリアを選択して「興味ある視点(view of interest)」を生成するためのものであり、抽象的アイデアそのものの一部を構成すると判示した。引用先行技術と比較した場合にも、これらの構成要素の組合せが慣行的(conventional)を超えるものであることの証明がないとして、NantWorksの主張を退けた。
CAFCの判断:’051特許——文脈認識と環境適応は人間活動の整理
‘051特許のクレームについて、地裁は当該クレームが「環境に関する情報(context)を決定し、その環境に基づいて関連するARオブジェクトの表示を変更するシステム」を記述するものであり、これは「人間活動の整理(organizing human activity)」の一形態に当たると認定した。
CAFCはこの分析を支持した。ステップ2の分析において、NantWorksは地裁がクレームの非慣行性に関する専門家証言を無視したと主張したが、CAFCはクレームが慣行的なコンポーネントを呼び出していることに事実上の争いはなく、NantWorksの専門家報告書は明細書の未クレーム部分を繰り返すか、または結論的な陳述に留まるものに過ぎないと指摘し、主張を退けた。
AR特許と§101:継続する課題
本判決は、AR・VR技術をめぐる§101の適格性争いにおける一例を追加するものだ。AR技術に固有の位置情報処理や文脈認識機能は、Aliceテストの下で「抽象的アイデア」と評価されやすく、特許適格性の確保が困難な領域とされてきた。
NantWorksはこれとは別の訴訟でも知財権行使活動を展開しており、本件もその一環と位置づけられる。本判決は非先例的なものであるが、AR技術に携わる特許実務家にとって、クレーム設計においてより具体的な技術的効果や特定のコンポーネントとの組合せを明示することの重要性を改めて示すものといえる。
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パテント探偵社 編集部
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