英国知的財産庁、コーポレートプラン2026-2027を公表――ワンIPO変革・AI著作権・SEP改革を最終年度の重点に

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英国知的財産庁(UK IPO)は2026年5月11日、コーポレートプラン2026-2027(Corporate Plan 2026 to 2027)を公表した。これは2024年から2027年までの戦略「IP for a creative and innovative UK 2024 to 2027」の最終年度の活動計画で、ワンIPO変革プログラム(One IPO Transformation programme)の推進、AIと著作権をめぐる政府方針の具体化、標準必須特許(SEP)と意匠制度の改革、IP犯罪への取り締まり強化、中小企業(SME)のIP活用支援、業務でのAI導入による効率化など、5つの重点領域を掲げる20ページの文書である。

同庁の最高経営責任者兼総監察官(Comptroller General)であるAdam Williams氏は、「コーポレートプランは、我々が達成した着実な進捗と、現行戦略の最終年度において戦略目標を実現することへの注力を反映している。ワンIPOパテントサービスの定着・強化、商標サービスの変革開始、レガシーシステムの停止を進めながら、優れた顧客サービスを継続する」と述べた。Williams氏はまた、英国IPフレームワークが技術進歩に追随し、ファーストモーバー優位の経済的果実を保護できる体制を維持することの重要性を強調した。

ワンIPO変革プログラム

第一の柱はワンIPO変革プログラムの推進である。同プログラムは英国IPO業務全体を統合的なデジタルプラットフォームに移行することを目的とし、すでに特許サービスのワンIPOプラットフォームへの移行が開始されている。2026-2027年度は、ワンIPOパテントサービスの定着・強化に加え、商標サービスの変革を本格的に開始し、並行してレガシーシステムの計画的廃止を進める。中断のない顧客サービス維持が前提条件として明示されている。

AIと著作権、SEP・意匠改革

第二の柱は英国IPフレームワークの強化である。AIと著作権をめぐっては、英国政府が選定した政策アクションに向けた作業を継続する。AIモデルの訓練に著作物が使用される場合の権利者保護、テキスト・データマイニング例外の範囲、生成AI出力物の取り扱いなどが論点として残されているなか、コーポレートプランはこの分野での政府方針の実装を引き続き進める旨を明記している。

SEPについては、改革に向けた施策を進める方針が示されている。英国IPOは、過去数年にわたりSEPライセンス交渉の透明性向上、FRAND(公正・合理的・非差別的)条件の運用改善、紛争解決メカニズムの強化などを検討してきた。意匠制度については、英国EU離脱後の意匠保護枠組みの最新化を含む見直しが進められる。さらにIP犯罪への取り締まりも重点課題に挙げられ、執行強化と関係機関との連携改善が明記された。

中小企業(SME)支援と人材育成

第三の柱は中小企業のIP活用支援である。コーポレートプランは、SMEがIPスキル、助言、資金調達へのアクセスを改善することで、英国で事業を開始し、規模を拡大し、英国にとどまることができる環境整備を目指す。スタートアップ企業がIPを担保とした資金調達を行いやすくする金融イノベーション、IP教育プログラムの拡充、地域の中小企業支援ネットワークとの連携強化が想定される。

第四の柱は組織能力の強化である。リーダーシップとスタッフ能力の強化、戦略的人材計画の実行、説明責任・適応性・つながりを重視した組織文化の定着を進める。第五の柱は業務システムの近代化とAI導入であり、業務効率と顧客体験の双方を改善する目的でAIを積極的に活用する方針が示されている。これは特許審査支援、商標審査支援、検索ツールの高度化、顧客窓口対応の改善など、複数領域での適用が予想される。

本プランの位置づけと先行する政策議論

本コーポレートプランは2024年から2027年までの3年戦略の最終年度の行動計画にあたる。英国IPOは2026年2月、Emotional Perception AI事件で英国最高裁がAerotelテストを放棄し欧州特許庁(EPO)寄りの「any hardware」アプローチを採用したことを受け、AI関連特許の審査実務を改訂してきた。AIと著作権の関係についても、2025年から2026年にかけて政府が複数のオプションを検討してきており、本プランはこれらの政策議論の実装段階に重点を置く形となっている。

UK IPOは英国経済の競争力強化に向けたIP制度の信頼性と現代性の維持を中心テーマに据えており、SEPや意匠の改革、AIと著作権の政策実装、SME支援、内部DX推進という多面的なアジェンダを2026-2027年度に集中投入する。最終年度の進捗が、2027年以降の次期戦略策定の方向性を左右することになる。

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パテント探偵社 編集部

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