グーグルは2026年4月27日、米国特許商標庁(USPTO)長官の裁量によるIPR(当事者系査定系審判)申請却下の適法性を争うため、米国最高裁判所に上告受理申請(サーシオレアライ申請)を提出した。本件はVirtaMove社が保有する特許に対してグーグルが提起したIPR申請が、USPTO長官のスクワイアーズ長官の「定着した期待(settled expectations)」法理に基づき却下されたことを受けたものである。
「定着した期待」法理とは
USPTO長官のジョン・A・スクワイアーズ氏は、出願から相当期間が経過した特許——とりわけ存続期間の6年以上を経過したもの——に対するIPR申請を裁量により却下する運用を採用している。長官はこの方針の根拠として、特許権者が長期間にわたって権利の有効性に対する挑戦を受けることなく特許を保有してきたという「定着した期待」を保護する必要性を挙げている。
本件でグーグルが無効化を試みたVirtaMove社の特許は、IPR申請時点ですでに14年以上存続しており、長官はこの「定着した期待」を重視してIPR申請を却下した。
連邦巡回控訴裁判所での経緯
グーグルは長官の判断に対し、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に職権濫用令状(マンダマス)の申請を行ったが、同裁判所は2026年1月にこれを却下した。CAFCは、長官の裁量によるIPR申請の拒否について司法審査が及ぶ範囲は限定的であるとの立場を取った。
最高裁への問い
グーグルの上告受理申請は、以下の二点を主要な法律問題として提示している。第一に、IPRが特許の存続期間を通じて申請可能と法定されているにもかかわらず、USPTOが「定着した期待」を考慮して申請を却下する法的権限を有するか否か。第二に、法律に反する根拠による申請却下について、連邦裁判所が司法審査を行う権限を有するか否かである。
これらは特許政策の根幹に関わる問題であり、特にスクワイアーズ長官が就任以降積極的に推進してきた「強い特許」政策の合法性が問われている。
背景:サムスン対Headwater訴訟との関連
同一の「定着した期待」法理によりIPR申請が却下された別の事案では、サムスンがHeadwater Research社の特許侵害訴訟において2億7800万ドルの損害賠償命令を受けたと報じられており、この法理の適用が実際の侵害訴訟における被告企業の防衛手段を制限していることが示されている。
訴訟戦略上の意義
IAM Magazineはグーグルの最高裁申請が認容される可能性を「低い」と評価しているが、本件が最高裁に受理されれば、USPTO長官の裁量的IPR却下権限の範囲と司法審査の可否について初めて最高裁が判断する機会となる。技術系企業や専門特許事業体(NPE)双方にとって、特許ライフサイクル全体にわたるIPRの利用可能性に大きく影響する可能性がある。
最高裁は毎年10月から翌年6月にかけての開廷期に審理を行う。本件の受理可否の判断は、2026年後半に下される見通しである。
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パテント探偵社 編集部
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