ディズニー等がHailuo AI著作権侵害訴訟で却下申立てに反論——中国AI企業MiniMaxとの法廷闘争が本格化

知財ニュース

Bloombergによれば、ディズニー・エンタープライズ、マーベル・キャラクターズ、ルーカスフィルム、ユニバーサル・シティ・スタジオ、ワーナー・ブラザース・エンタテインメントなど複数の大手映画スタジオが中国のAI企業MiniMax(上海虚宇基智科技)を相手取り提起した著作権侵害訴訟において、被告MiniMaxおよびNanonoble社が2026年4月10日、訴状の却下を求める申立てを提出した。同訴訟は2025年9月16日にカリフォルニア中部地区連邦地方裁判所(事件番号:2:25-cv-08768)に提訴されており、スタンレー・ブルーメンフェルド・ジュニア裁判官の担当の下、2026年5月29日に却下申立てに関する審問が予定されている。

本訴訟の発端は、MiniMaxが提供するHailuo AIと呼ばれる生成AIサービスに対する原告側の問題提起である。原告側は訴状で、Hailuo AIがユーザーからのリクエストに応じてダース・ベイダー(スター・ウォーズ)、スパイダーマン(マーベル)、シュレック(ドリームワークス)など著作権が保護されたキャラクターの高品質な画像・動画を生成・ダウンロード可能な状態で提供していると主張した。MiniMax自身が同サービスを「ポケットの中のハリウッドスタジオ」として宣伝していたことも、原告側が侵害の悪意性を示す証拠として挙げている。訴えの内容は直接侵害に加え、間接侵害(寄与侵害および誘発侵害)にまで及んでいる。

MiniMaxとNanonobleが申立てで主張した却下理由は複数にわたる。第一に、人的管轄権の欠如である。中国企業である被告が米国に対して最小限の接触(minimum contacts)を持たないとして、カリフォルニア中部地区連邦裁判所が管轄を行使できないと主張した。第二に、著作権登録の特定不足である。特定の作品が著作権登録の対象に含まれていても、そこに登場するキャラクターが自動的に全ての利用形態で著作権保護を受けるわけではないとし、原告側がキャラクター自体を保護する特定の著作権登録を十分に特定していないと論じた。第三に、直接侵害の域外性である。AIモデルのトレーニングは中国国内で行われており、著作権の複製行為は米国内で発生していないという主張である。第四に、寄与侵害の要件不充足として、Hailuo AIが侵害を容易化するために実質的に設計されているとの立証が不十分だと指摘した。被告側代理人は申立書の中で、本件を「AI(人工知能)に関する訴訟において完全に人工的(artificial)な主張だ」と皮肉った。

原告側は反論書面を提出しており、ディズニーおよびワーナー・ブラザース側は裁判官に却下を認めないよう求めている。管轄権については、MiniMaxのHailuo AIがアプリストアや広告を通じて積極的に米国市場を対象としており、管轄要件を満たすと主張している。著作権登録については、登録済み作品に登場するキャラクターへの侵害は当然にその作品の著作権登録の範囲に含まれるとし、被告側の解釈を否定している。

本件は、生成AIサービスと著作権保護の交差点で生じる新たな法的問題を複数含んでいる。まず、AI生成コンテンツにおける間接侵害の成立要件の問題がある。ユーザーが著作権キャラクターの生成を要求し、AIサービスがそれに応じた場合、サービス提供者が寄与侵害・誘発侵害の責任を負うかどうかは、ソニー対ユニバーサル事件(1984年)やグロクスター事件(2005年)の判断をAI文脈に適用する問題として重大な意味を持つ。次に、著作権登録とキャラクター保護の範囲についての解釈問題がある。映画や書籍の著作権登録が、そこに登場するキャラクターの全ての利用形態を保護するかどうかという点は、本件の結論に直結する法的問題である。さらに、中国AI企業に対する米国裁判所の管轄権行使の可否という問題は、生成AI分野での国際的なIP紛争の増加を踏まえ、今後の先例として大きな意味を持つ。

本件と並行して、生成AI著作権訴訟のタイムラインが示す通り、OpenAI、Stability AI、Midjourney、Metaを相手取った複数の著作権訴訟が米国各地で進行中であり、AI学習データの著作権適格性とフェアユースの境界をめぐる法的整理は国際的な急務となっている。本件が中国企業を対象としている点は、AI著作権紛争が国境を越えた局面に入りつつあることを示している。

2026年5月29日に予定されている審問でブルーメンフェルド裁判官が管轄権・著作権登録・域外適用の各争点に関する判断を示した場合、その結論は米国における生成AI著作権訴訟全体の枠組みに影響を与えるものと見られる。特に管轄権の認定がなされれば、中国本土のAI企業が米国著作権法の直接的な射程内に置かれることを意味し、グローバルなAIサービス提供における法的リスク評価に変化をもたらす可能性がある。

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パテント探偵社 編集部

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