USPTO、職権再審査に「事前申出手続」を新設——特許権者がSNQ不存在を30日以内に先手主張

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米国特許商標庁(USPTO)は2026年4月1日付けで、当事者系再審査(Ex Parte Reexamination)に関する新手続きとして「事前申出手続(Pre-Order Response Procedure)」を正式に導入した。USPTO長官Coke Squires氏が署名した官報通知(Official Gazette Notice)によると、この手続きにより特許権者は、再審査請求が受理・命令される前に、「実質的新規問題」(Substantial New Question of Patentability、以下SNQ)の存在に対して30ページを上限とする回答書を提出できるようになる。

従来の職権再審査手続きでは、再審査請求書が提出されると、特許権者はUSPTOが「実質的新規問題あり」と判断した上で再審査を命令した後にはじめて、公式な応答の機会を与えられていた。新手続きのもとでは、再審査命令が下される前の段階で特許権者に発言権が与えられる。具体的には、再審査請求書が特許権者に送達された時点から30日以内に、特許権者はSNQの不存在を主張する書面を30ページ以内で提出することができる。

この変更の実務的意義は大きい。まず、職権再審査は近年急増しており、2026年第1四半期だけで前年同期比157.1%増という統計がUnified Patentsの報告によって明らかになっている。この急増はPTABによるIPR(査定系審判)の裁量的棄却が増加したことで、特許無効化を試みる当事者が職権再審査に活路を求めた結果とみられている。再審査件数の増加が続く中、SNQ判断の前に特許権者が主張できる機会を設けることは、手続きの早期収束や不必要な審査負担の軽減につながり得る。

SNQとは何か。USPTOは職権再審査の開始条件として、従来の先行技術には記載されていない、または従来の審査では検討されなかった「実質的に新たな特許性の問題」を提起する先行技術が存在するか否かを判断する。再審査請求者が提出した先行技術がSNQを構成すると判断されれば再審査が命令されるが、そうでなければ請求は却下される。新手続きでは特許権者が先手を打って「提示された先行技術はSNQを構成しない」と論証する機会を得ることになる。

特許実務上の戦略的含意として、この手続き変更は特許権者にとってより積極的な防衛オプションを提供する。これまでは再審査命令が下された後に初めて応答できたため、コスト・時間・レピュテーション上の不利を被ることなく再審査を防ぐ手立てが限られていた。事前申出手続の導入により、再審査の扉が開かれる前に特許権者が手続きを閉じることが可能になる。ただし、この機会を有効に活用するには、再審査請求書の内容を短期間で精査し、説得力あるSNQ不存在論を展開する能力が求められる。

今回の措置は、USPTOが職権再審査をめぐる手続き的均衡を是正しようとする一連の動きの一環として位置づけられる。2025年から進行しているPTABの裁量的棄却強化により特許有効性争訟の主戦場が変化している中、職権再審査制度の透明性・公平性を高めることは、制度全体の信頼性確保という観点からも重要な意義を持つ。USPTO長官が自ら官報通知を起草・署名した点は、本手続き変更に対するUSPTO上層部の関与の深さを示している。

30ページという上限は、先行技術の分析や具体的な特許クレームとの対比など、実質的な法的議論を展開するには十分なスペースである一方、冗長な主張の抑制にもなる。30日という期間制限は短いため、大規模なポートフォリオを保有する特許権者や、再審査請求が突然提出された場合には、迅速な内部対応体制の整備が実務上の課題となる。

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パテント探偵社 編集部

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