連邦巡回区控訴裁判所、Recor Medical対Medtronic Irelandで関連会社ライセンス後のArticle III適格を肯定。同日付A.L.M.判決の枠組みを適用

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米連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は2026年5月19日、Recor Medical, Inc.対Medtronic Ireland Manufacturing Unlimited Co.事件(No. 25-1998)において、医療機器大手Medtronicのアイルランド子会社が同日付の先例的意見A.L.M. Holding Co. v. Zydex Industries Private Ltd.(No. 25-1317)に従い、関連会社へ独占的ライセンスを付与した後も特許侵害訴訟を提起するためのArticle III適格を保持していると判断した。CAFCは、Medtronic Ireland Manufacturing Unlimited Co.(以下「Medtronic Ireland」)の反訴を当事者適格欠如を理由に却下したカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所の判断を破棄し、Federal Rule of Civil Procedure 19に基づく必要的共同訴訟の有無を判断させるため事件を差し戻した。Chen裁判官が起案を担当している。

事案の対象特許は、Medtronic Irelandが所有するU.S. Patent Nos. 8,845,629と11,801,085であり、いずれも腎神経変調術(renal neuromodulation)に関するシステムおよび方法をクレームしている。腎神経変調術は、腎臓に接続する神経線維に熱エネルギーを与えて高血圧を治療する技術で、Medtronicの「Symplicity Spyral」高周波カテーテルシステムとRecor Medicalの「Paradise System」超音波カテーテルシステムが市場で直接競合している。Recor Medicalは2022年5月、Medtronic Irelandを相手にカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所で確認訴訟を提起し、Paradise Systemが‘629特許のクレームを侵害せず、当該クレームが無効であることの確認を求めた。Medtronic Irelandは両特許の侵害を主張する反訴を提起したが、開示手続の中で2023年締結の独占的ライセンス契約(Exclusive License Agreement、以下「ELA」)の存在が明らかになった。

ELAの相手方はMedtronic Vascular Galway Unlimited Company(以下「Medtronic Galway」)で、契約上指定された「Products」について製造・販売・輸入・実施の独占的権利が付与されていた。Recor Medicalは、当該ライセンスによってMedtronic Irelandから排他的権利が全て移転したと主張して反訴の却下を申し立て、地方裁判所は2024年、これを認めて反訴と確認請求のすべてを却下した。地方裁判所はMorrow v. Microsoft Corp.に依拠し、Medtronic Irelandが留保した提訴権・サブライセンス拒否権・譲渡制限権・ELA満了時の権利復帰権はいずれもArticle III適格を支えるには不十分と判断していた。

CAFCはまず、地方裁判所の却下後にELAの修正やMedtronic IrelandによるRecor Medicalに対する別件提訴が行われた経緯を踏まえ、本件が訴訟継続性の観点で「moot(実益喪失)」となっているかを検討した。Chen裁判官は、Recor MedicalがMedtronic Irelandの提訴適格欠如を前提に主張する不衡平の抗弁(unclean hands)の維持可能性に却下判断が現に影響を与えている点を指摘し、本件には依然として法的効果が継続していることから訴訟継続性は失われていないと結論した。

実体判断に進んだCAFCは、同日発出されたA.L.M. Holding Co. v. Zydex Industriesの先例的意見を参照し、その分析枠組みを本件に適用した。CAFCは、Medtronic Irelandが留保した次の3つの権利が一体としてArticle III適格を支える排他的利益を構成すると判断した。第一に、Medtronic Galwayが合理的期間内に侵害行為への対応を行わない場合にMedtronic Irelandが二次的に提訴できる権利。第二に、Medtronic Galwayが第三者にサブライセンスを付与する際に発生するロイヤリティの取得権。第三に、Medtronic Galwayが付与しようとするサブライセンスに対するMedtronic Irelandの拒否権である。

CAFCは特に第三のサブライセンス拒否権を重視し、Medtronic GalwayがRecor Medicalのような侵害被疑者にMedtronic Irelandの書面同意なしでサブライセンスを付与できない点が、本件をMorrowと区別する決定的要素であると述べた。Morrow事件では特許権者がライセンシーに対して無償のサブライセンスを自由に付与でき、提訴権が「illusory」と評価されたが、本件のサブライセンスは必ずMedtronic Irelandの承認を要し、かつロイヤリティが発生する構造となっている。さらにELAは和解金の配分条項を含んでおり、Medtronic Irelandが自ら提起する訴訟について実質的な和解権限を保持していることが裏付けられたとした。

加えてCAFCは、ELAによるMedtronic Galwayへの独占的権利付与が「Products」として具体的に指定された製品に限定され、未指定の製品や未完成の医療機器に関する権利はMedtronic Irelandに留保されている点も指摘した。すべての排他的利益が移転したわけではないという事実も、Article III適格の維持を支える要素となる。

CAFCは差戻し後の判断対象としてFRCP 19に基づく必要的共同訴訟の論点を残しており、Medtronic Galwayの参加要否は地方裁判所の再判断に委ねられた。今回の判決は、グローバル製薬・医療機器企業がアイルランド・シンガポール等の関連会社にライセンスを集約する税務最適化スキームを採用した場合に、米国内の特許侵害訴訟における当事者適格に与える影響を具体的に示すものとなった。

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パテント探偵社 編集部

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