米国特許商標庁(USPTO)は2026年4月、人工知能を活用した特許調査パイロットプログラム「ASAP!(Artificial Intelligence Search Automated Pilot Program)」の延長を発表した。当初2026年4月20日を申請受付期限としていたが、プログラムの有効性評価に必要なデータをさらに収集するため、受付期限を2026年6月1日まで延長した。同時に参加枠を各テクノロジーセンター(TC)あたり200件から400件に倍増させ、総数で約3,200件を目標とした。また、2026年3月23日以降に申請された請願については450ドルの手数料を免除している。
ASAP!プログラムは2025年10月にUSPTOが開始した先行技術調査の自動化パイロットである。USPTOの公式ページによれば、同プログラムはAIツールを用いて出願人が提出した非仮出願(utility application)の先行技術調査を、審査官による審査開始前に自動的に実施するものである。AIは出願の協力特許分類(CPC)および明細書・クレーム・要約書を文脈情報として活用し、米国特許、米国公開公報(PG-Pub)、外国文献(FIT)を含む公開データベースを検索する。
参加対象は、2025年10月20日以降かつ2026年6月1日以前に35 U.S.C. 111(a)に基づき出願された「原出願(original, noncontinuing)」の非仮実用出願に限られる。継続出願や一部継続出願は対象外である。参加要件として、出願人は請願(petition)を提出し、プログラムへの参加に同意する必要がある。AIが生成した調査レポートは審査官に提供されるが、審査官は独自の判断で追加調査を実施する権限を有する。
IP Watchdogの報道(2026年4月16日)およびPatent Docs(2026年4月19日)によれば、USPTOはプログラムの延長とともに参加を促すための追加インセンティブを導入した。3月23日以降の申請については450ドルの請願手数料を全額免除するという措置は、当初の有料設定と比較して参加障壁を実質的に撤廃するものである。
プログラムの延長と参加枠拡大の背景には、USPTOが当初設定した約1,600件(TCあたり200件)の目標に対して参加応募が当局の期待に沿うペースで集まっていないという事情があるとみられる。プログラムの有効性を適切に評価するためには一定規模のデータが必要であり、延長と手数料免除はその収集を加速させることを目的としている。
またUSPTO長官のジョン・スクワイアズ(John Squires)氏は、サンディエゴ大学特許法カンファレンスにおいて、AIによる検索ツールのバージョン2を近日中に公開する予定であると述べた。バージョン2の主要改善点として、現行バージョンでは明細書全体を文脈として活用するにとどまっていたのに対し、新バージョンでは出願のクレームそのものを対象とした検索が可能になると説明している。
ASAP!プログラムの意義は、AIが審査プロセスの一部を担うパイロット事業としての先例にある。USPTOは従来、審査官による手動の先行技術調査を審査プロセスの中核としてきた。AIによる自動調査の精度と有用性が実証されれば、将来的には審査待機期間の短縮や審査品質の向上につながる可能性がある。一方、AIが生成した調査レポートの網羅性や正確性、また審査官がAIの出力に依存することによるリスクについては、実務界から慎重な評価を求める声もある。
参加申請の締め切りは各TCあたり400件に達した時点または2026年6月1日のいずれか早い方である。出願人はUSPTOの公式ページから参加要件および申請手続きを確認することができる。
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パテント探偵社 編集部
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