USPTO、不正商標出願1万500件の抹消に着手。署名偽造・架空料金請求の代行業者11社に行政命令

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米国特許商標庁(USPTO)は2026年5月12日、連邦商標登録簿から不正・無効な商標を除去するための一連の行政措置を取りまとめた商標アラートを公表した。2025年10月以降に発出された11件の行政命令により、約1万500件の商標出願・登録が無効化された、または無効化の対象とされている。違反内容には、弁護士署名の偽造、存在しない登録要件・手数料の捏造、二重請求などが含まれる。本件はIPWatchdogが5月13日に報じた。

USPTOは2025年に、不正出願を専門に行っていた外国系出願代行会社に制裁を科し、米国弁護士の資格情報の流用、虚偽の使用見本提出、他人名義による署名行為などを理由として、当該会社に関連する5万2,000件超の商標出願・登録を抹消した経緯がある。今回公表された11件の行政命令は、その流れを継承する一連の取締りに位置づけられる。

主な行政命令の対象

Shenzhen Huanyee IP(中国・深圳)に対する2026年1月27日付の理由開示命令(show cause order)では、USPTOの規則とUSPTO.govの利用規約の複数違反が指摘された。当該会社に関連する一つのUSPTO.govアカウントは、2020年3月から2021年5月までの14か月間に4,900件超の商標出願を行い、しばしば3分以下の間隔で連続出願していた。さらに、署名欄に署名した個人がUSPTOから問い合わせを受けた際、偽証罪を承知のうえで「自分は出願に関与していない」と宣誓供述した事例も確認された。

Swift Brand Mark LLCに対する2026年2月25日付の命令では、地理的に多様な数千の商標権者の名義で1,600件超の商標出願が、小規模で地理的に孤立した単一のコンピュータネットワークから提出された事実が指摘された。USPTOは直接署名方式(direct signature method)を要求していたが、署名は本来の署名者ではなく被申立人が代行入力していた。また、USPTO.govアカウントに紐づく氏名は、いずれも弁護士または弁護士の監督下にあるサポートスタッフの資格を満たしていなかった。

Deputy Trademarkに対する2026年3月26日付の命令では、単一の電子メールアドレスで関連管理されているとみられる16のUSPTO.govアカウントが対象とされた。同社は二重請求の慣行に加え、出願人が必要としない追加サービス(商標登録の更新宣誓書、使用継続証明など)を有償提供していた。商標権者との通信記録が証拠として添付された。

USPTOの取り締まり姿勢

USPTOの商標出願件数は2020年代初頭、中国からの大量出願を背景に過去最高水準に達した。USPTOは同時期から、オンラインプラットフォームへのログイン時の本人確認手続を強化するなど、不正出願対策を段階的に進めてきた。連邦取引委員会(FTC)も2025年9月、消費者向け警告として、USPTOを装った詐欺業者に対する注意喚起を発出している。

USPTOのジョン・スクワイヤーズ長官(John Squires)の任期は、特許審判部(PTAB)における特許有効性手続への影響で注目されているが、不正商標対策における執行強化も同時期に進展している。スクワイヤーズ長官の正式承認直前にも、上述の5万2,000件抹消事案が公表されている。

商標権者・出願人実務への含意

今回の動きは、米国で商標保護を求める権利者にとって以下の実務的含意を持つ。第一に、不正な代行業者への発注は出願自体の無効化リスクのみならず、二重請求等の経済的損害をもたらす。USPTOの公式チャネル以外からの連絡(更新手数料を称する請求書など)は警戒すべきである。第二に、米国弁護士による署名・代理が要件である以上、海外権利者は適格な米国代理人を介した手続が不可欠となる。第三に、USPTOによる審査・登録後の事後的な抹消手続が活発化していることから、登録後も継続的な権利監視と適正な使用証明書の提出が一層重要となる。

USPTOによる行政命令の具体的な対象一覧と各命令の全文は、USPTO公式の商標アラート及び関連サブスクリプションセンターを通じて公開されている。

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パテント探偵社 編集部

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