米国連邦巡回控訴裁判所は2026年4月1日、Puradigm, LLC v. DBG Group Investments LLC 事件で、審査経過における出願人の陳述が特許請求項の範囲を永久に縮減する効力を有することを確認する判決を下した(第24-2299号事件、非先例判例)。本判決は、出願人の言葉選びが特許権行使を大きく左右する現実を示唆するものである。
事件の争点は、光触媒による空気浄化装置に関する米国特許第8,585,979号についての特許侵害訴訟である。本特許は、紫外線を当てた触媒コーティング済みターゲットに対してイオンを発生させ、空気中の汚染物質を除去する技術を保護している。請求項の際立った特徴は、「鏡面反射UV反射板」と呼ばれる装置であり、紫外線を散乱させるのではなく「直接に」ターゲットに跳ね返す仕組みである。
被告DBGグループが使用していた製品は、磨かれていないアルミニウム製反射板を採用していた。地裁がDBGグループに有利な略式判決を下した根拠は、出願人が審査過程において「磨いたアルミニウム」を排除する陳述をしており、この陳述が「磨かれていないアルミニウム」にも論理的に拡大すると判断されたためである。連邦巡回控訴裁判所はこの判断を支持した。
重要な点は、当初の審査官がPuradigmの陳述に反対していたにもかかわらず、その陳述が法的効力を持つ「審査経過放棄」(prosecution disclaimer)となったことである。つまり、出願人が審査中に「この実施例は権利範囲に含まない」と述べれば、後になって「やはり含める」と言い張ることはできないのである。
実務的含意は深刻である。出願人は明細書・補正書作成時のあらゆる用語選択に対して、将来の訴訟での責任を負う可能性がある。特に、審査官が請求項を拒絶した場合、その拒絶を克服するための陳述は、後の権利解釈において永続的な拘束力を有する。結果として、弁理士・弁護士には高度な戦略的思考が要求される。
本判決は、特許権者に警告を発している。出願段階での不正確または不十分な用語定義は、将来の権利行使可能性を著しく損ないかねない。特に国際出願戦略において、各国の言語・規則の違いを考慮しながら明細書を作成する必要がある場合、この教訓の重要性はさらに高まる。
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パテント探偵社 編集部
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