米国特許商標局(USPTO)は2026年4月16日、特許審査前のAI自動調査パイロットプログラム「ASAP!」(Artificial Intelligence Search Automated Pilot Program)について、請願受付期限を当初の2026年4月20日から同年6月1日に延長すると発表した。申請数が予期を下回ったことへの対応措置であり、USPTOは幅広い出願人に参加を促している。
ASAP!プログラムは2025年10月に開始された。出願人が申請(請願)を提出することで、USPTOが審査開始前にAIを活用した自動先行技術調査の結果を通知する仕組みである。この通知は「自動調査結果通知(Automated Search Results Notice、ASRN)」と呼ばれ、最大10件の関連性のある先行技術文献が示される。ASRNは非拘束的(non-binding)であり、その内容が審査官の最終判断を縛るものではないが、出願人は通知を受けて、補正請求書の提出・審査の延期・出願放棄の申請などを検討する材料として活用できる。対象となるのは2025年10月20日以降に出願された原出願の非仮特許出願(original nonprovisional utility application)であり、今回の延長により期限は6月1日まで延長される。
USPTOが公表した参加実績によると、2026年4月16日時点でASAP!の請願受付数は169件にとどまり、そのうち採択済みは76件に過ぎない。USPTOは全技術センター(TC)合計で3,200件(各TCで400件)の採択枠を設けており、現時点での採択数はその約2.4%に留まっている。申請手数料は2026年3月以降免除されており、参加のコスト障壁は実質的に取り除かれている。それでも参加が低調に推移した背景には、プログラムの認知不足のほか、ASRNが非拘束的であるため出願人が積極的活用のインセンティブを見出しにくい点も要因として指摘されている。
ASAP!プログラムは、Director John Squires体制下でのUSPTOによるAI活用推進施策の一環として位置づけられる。USPTOは2026年3月に商標分類へのAI適用ツール「Class ACT」(Trademark Classification Agentic Codification Tool)も公表しており、特許・商標の両審査領域でAI技術の実装を段階的に進めている。Acting Trademark Commissioner Dan Vavonese氏は、「AIツールの開発・導入により、職員は審査における本質的な問題の判断と推論に集中できるようになり、利害関係者に利益をもたらす」とコメントしている。
実務上の観点からは、ASAP!への参加は特許出願のリスク管理に新たな選択肢を提供する。審査前に潜在的な先行技術を把握できれば、早期段階での補正や主張の修正が可能となり、審査手続の効率化が期待される。特に日本企業にとっても、米国へのPCT出願を含む非仮出願を行う場合、ASAP!を通じて潜在的な拒絶理由を早期に察知する機会となり得る。一方でASRNが提示する先行技術の精度や範囲については、今後の参加件数の増加とデータ蓄積を経た評価が必要であり、プログラムの最終的な効果は2026年6月以降の分析を待つことになる。
USPTOは2026年6月1日までに採択枠の拡充を目指しており、今回の期限延長はデータ収集の充実とプログラム評価の精度向上を図る目的がある。ASAP!の詳細および申請方法はUSPTOの公式ウェブサイト(ASAP! Pilot Program公式ページ)で公開されている。
この記事について
パテント探偵社 編集部
知的財産の世界で起きている出来事を、ジャーナリズムの手法で報道・分析する独立メディア。特許番号・法的根拠・当事者名を正確に記述しながら、専門家以外にも読みやすい記事を届けています。掲載内容は法的アドバイスではありません。

コメント