連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は2026年5月6日、DK Crown Holdings Inc.対AG 18, LLC事件(事件番号24-2078)において、特許庁特許審判部(PTAB)の最終書面決定を支持し、DK Crown Holdings(旧称DraftKings, Inc.)がAG 18保有の米国特許第9,978,205号(’205特許)の請求項18について不特許性を立証できなかったとする判断を維持した。本判決により、DraftKingsが当事者系レビュー(IPR)で唯一無効化に失敗していた請求項18の有効性が控訴段階でも確定した。
事件の経緯——5特許のうち1請求項のみ生存
AG 18, LLC(事業名:Arrow Gaming)はネットワーク対戦ゲーミング技術に関する5件の特許を保有しており、そのうち本件の対象である’205特許「ネットワーク化ゲーミングにおける位置情報ベースの制限(Location Based Restrictions on Networked Gaming)」は、プレイヤーの地理的位置に基づいてオンライン賭博活動を制限するピア・ツー・ピア型ゲーミングシステムを保護する。
DraftKingsは2018年8月にAG 18から特許権侵害で提訴された後、PTABに対して当該5特許すべての請求項についてIPR申立を行った。地裁は同IPR手続の結果が出るまで本訴を停止した。本件の対象となったIPR2022-01447では、PTABは請求項1~17および19~30を先行技術により予期または自明として無効と判断したが、請求項18のみは特許性を維持した。
争点——後出しのGround 3主張をPTABが拒否
請求項18は独立請求項12を基礎とし、従属請求項15、16、17を経由した多重従属クレームであり、賭金の上限が非金銭的賭博に転換され、勝利時の払戻も非金銭的となるゲーミングシステムを規定する。
DraftKingsは申立書において、請求項18に対しては先行特許Bryson(米国特許第8,460,109号)のみを根拠とするGround 1およびGround 2のみを主張していた。Bryson特許に加えてSchlottmann参照を組み合わせるGround 3は、当初は請求項15~17に対してのみ向けられたものだった。
IPRが手続に付された後、DraftKingsは申立人答弁書(reply)の脚注において、PTABに対し請求項18をGround 1・2ではなくGround 3で分析するよう求めた。PTABは、これがSchlottmannを請求項18に対する新たな先行技術として導入する試みであり、当初申立書の論証の欠落を埋めようとするものであるとして、これを拒否した。請求項15~17の構成要素は請求項18の限定に必然的に組み込まれているところ、当初申立書はBryson単独で当該限定を教示または示唆するとは主張していなかったため、PTABはDraftKingsが立証責任を果たしていないと結論づけた。
CAFCの判断——「事務的な誤り」の主張を退ける
DraftKingsは控訴審で、PTABが請求項18をGround 3の下で分析することを拒否したのは「裁量権の濫用」であると主張した。同社はこの不備を「事務的な誤り(clerical error)」と性格づけ、Ground 3を請求項18にも適用する意図であったことは「自明」だったと論じた。
チェン裁判官(Judge Chen)執筆の判決はこの主張を斥けた。CAFCは「DraftKingsが申立人答弁書の脚注においてSchlottmannを請求項18への攻撃に追加することで、不特許性に関する新たなground(理由)を主張した、というPTABの判断に同意する」と述べた。同裁判所はさらに、判例法上PTABは申立書に記載されていない理論を取り上げることを禁じられていると強調し、後出しの脚注はAG 18の特許権者答弁書のいかなる主張にも応答していないと指摘した。DraftKingsは申立書を修正するための申立も行わなかった。
DraftKingsはまた、申立書に誤字があった事案であるVoice Tech Corporation v. Unified Patents, LLCを援用し、相互参照を通じて実質的主張が識別可能であった点を理由として救済を求めた。CAFCは本件をVoice Techとは区別できないと判断し、DraftKingsの申立書には、Ground 3またはSchlottmannを請求項18に適用する意図を示す相互参照や記載が一切存在しないと認定した。
付随的禁反言(collateral estoppel)の主張も退ける
DraftKingsはさらに、PTABが既に請求項10、12、15、16、17を無効と判断しており、これらの請求項を合わせると請求項18のすべての限定が含まれることから、請求項18は付随的禁反言(collateral estoppel)により不特許であるべきだと主張した。
CAFCはこの理論も明確に斥けた。判決は、Ohio Willow Wood Co. v. Alps South事件で示された立証責任の基準を満たしていないとし、「DraftKingsが提案する方法、すなわち異なる請求項から限定を『つなぎ合わせる(cobbling together)』ことで別の請求項を再構成する形での付随的禁反言を、当裁判所はこれまで適用したことがない」と述べ、本件で初めて適用する説得的理由は見いだせないと結論づけた。
実務上の意義
本判決は、IPR申立人が申立書段階で攻撃理由(grounds)を網羅的かつ正確に記載することの重要性を改めて確認するものである。申立後に答弁書段階で新たな先行技術参照を追加することはできず、たとえ「事務的な誤り」と性格づけても救済されないという原則が、CAFCの先例として再確認された。
付随的禁反言を巡る判示も注目に値する。PTABが既に無効と判断した複数の請求項の限定を寄せ集めて未審理の請求項を無効化することは認められないという判断は、IPRと並行訴訟における無効論の運用に明確な境界を引くものである。AG 18にとっては、訴訟継続のための足場である請求項18の有効性が確定したことになるが、DraftKings側はIPワッチドッグ誌のコメント欄で言及されたように、再審査(reexamination)への移行を検討する可能性も指摘されている。
オンラインゲーミング・スポーツベッティング業界における特許係争は、2018年のMurphy v. NCAA最高裁判決を契機とする市場拡大とともに高頻度化しており、本件はその一例として記録される。
この記事について
パテント探偵社 編集部
知的財産の世界で起きている出来事を、ジャーナリズムの手法で報道・分析する独立メディア。特許番号・法的根拠・当事者名を正確に記述しながら、専門家以外にも読みやすい記事を届けています。掲載内容は法的アドバイスではありません。


コメント