米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は2026年4月23日、Centripetal Networks, LLC(以下「Centripetal」)対Keysight Technologies, Inc.(以下「Keysight」)の特許侵害訴訟(事件番号:24-1406)において、非先例拘束的(nonprecedential)な判決を下した。同裁判所は、特許審判部(PTAB)が下したインタパルテスレビュー(IPR)の最終書面決定を「一部維持、一部破棄」とし、Centripetalが保有する米国特許第10,193,917号(「ルールベースのネットワーク脅威検知」、以下「’917特許」)の全クレームが自明(obvious)であるとの結論を示した。
‘917特許は、パケットフィルタリング装置がネットワークパケットを受信し、パケットフィルタリングルールで指定された基準と対応するか否かを判断する技術を開示している。Keysightは同特許の全クレームを対象にIPRを申し立て、PTABは最終書面決定において、クレーム1〜3・5〜13・15〜20については自明として無効と認定した一方、クレーム4および14については自明性の立証が不十分として有効と判断していた。
CAFCはPTABによるクレーム1〜3・5〜13・15〜20の無効認定を支持する一方、クレーム4・14についてはPTABの判断を誤りと判断して破棄した。CAFCは、Keysightが提示した先行技術(SourcefireとCiscoの先行文献の組み合わせ)を当業者が組み合わせる動機があると認め、クレーム4・14も含めた全クレームが自明であると結論付けた。その結果、実質的には’917特許の全クレームが無効となる判断が確定した。
Centripetalはクレーム4・14の保護を主張した際、先行技術文献がパケットフロー解析データを開示していない旨などを論拠としたが、CAFCはこれを退けた。裁判所は、PTABの事実認定を支持する実質的証拠(substantial evidence)が存在するとした上で、クレーム4・14についてはPTABが動機付け分析を誤って適用したと指摘した。
Centripetalは今回の特許とは別に、Keysightとの間で地方裁判所レベルの特許侵害訴訟も抱えており、一連の紛争の中でネットワーク脅威検知分野における特許ポートフォリオの有効性が繰り返し問われている。同社はパロアルトネットワークス(Palo Alto Networks)ともCAFCで別件の特許紛争を抱えており、ネットワークセキュリティ分野における特許訴訟の主要なプレイヤーとなっている。
今回の判決は非先例拘束的であり、将来の事件に対して法的拘束力を持つ先例とはならない。ただし、IPRにおける自明性判断のフレームワークとして、先行技術の組み合わせ動機の認定において裁判所がPTABの判断をどの程度尊重するか、またその限界がどこにあるかを示す事例として実務上の参照価値がある。
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パテント探偵社 編集部
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