米国連邦最高裁が2026年3月2日、AIシステムが著作権の権利主体となり得るかを問う上訴事件の上訴を受理しないことを決定した。これにより、人間による創作要件が米国著作権法の基本原則として堅持される方向性が確認され、AI生成コンテンツの知財保護をめぐる議論に重要な制約が生じた。
本事件の背景は次のとおりである。著作権登録官に対し、AI画像生成ツールが作成した画像について著作権申請を行う申請人が存在した。米国著作権庁(USCO)はこの申請を却下し、人間による著作行為がない限り、著作権保護は認められないとの立場を示した。この決定に対して訴訟が提起され、複数の下級審を経由して最高裁に到達していた。
最高裁が上訴を受理しないという決定の法的意義は、以下の点にある。(1)著作権法における著作者は人間に限定されるという解釈が、司法府の最上位レベルで暗黙のうちに認可された。(2)AI生成コンテンツの著作権保護を求める営為は、立法措置がない限り困難であることが示唆された。(3)AIは権利主体ではないという原則が強化された。
今後、AI生成コンテンツの著作権保護は、人間による創作工程への関与度の程度に依存する形で判例が発展する見通しである。
産業界への実務的影響としては、AI生成素材の商業利用において著作権ライセンスの取得対象が不明瞭化すること、AI生成コンテンツを扱う企業は著作権登録よりも意匠権・営業秘密保護に重点を置く戦略へシフトすることなどが予想される。
米国著作権法においては、人間の創作行為が著作権保護の前提条件として確立されてきた。本最高裁決定は、そうした原則がAI時代にも継続することを示唆しており、AI企業に対する著作権侵害訴訟の判例形成にも影響を与える可能性がある。
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パテント探偵社 編集部
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