USPTO、Robin Evans氏を特許局長代行に任命──AI特許調査パイロット延長など新体制下の動向

知財ニュース

米国特許商標庁(USPTO)は2026年5月1日、Robin Evans氏を特許局長代行(Acting Commissioner for Patents)に任命した。Valencia Martin-Wallace氏が同日付で退職したことに伴う人事措置であり、USPTOは新しい組織図を公表し、副局長(Deputy Commissioners)ポジションを含む新体制を明示した。

Robin Evans氏の経歴

Evans氏はUSPTOで機械分野の審査官としてキャリアをスタートさせた。その後、電気加熱技術および流体制御技術分野の上席審査官(Supervisory Patent Examiner)、関連分野の品質管理専門官(Management Quality Assurance Specialist)を歴任した。

同氏はUSPTOの初代地域オフィスとなるデトロイト事務所(ミシガン州)の初代地域部長(Regional Manager)として選抜され、上級幹部職(Senior Executive Service)の審査官職としてTechnology Center 2800(電子回路・半導体等)の所長に就任した。またデンバー(コロラド州)のロッキーマウンテン地域オフィスの暫定所長も務めた。Acting Commissioner就任直前は、特許品質担当の局長代行(Acting Associate Commissioner for Patent Quality)の職にあった。

AI特許調査パイロット(ASAP!)の延長

Evans氏の就任と前後して、USPTOでは複数の注目すべき施策が進行している。

2026年4月16日、USPTOは「AIサーチ自動化パイロットプログラム(ASAP!)」の実施期間を2026年6月1日まで延長すると発表した。同プログラムはAIツールを活用した先行技術調査の有効性を評価するためのもので、延長はプログラムの効果測定に必要な追加データの収集を目的としている。USPTOはプログラム参加に係る請願手数料(37 CFR 1.17(f)規定)の免除措置も継続して適用している。

ファーストアクション件数が新規出願件数を超過

2026年4月10日には、「会計年度内のファーストアクション件数が同年度の新規出願件数を上回るのは約10年ぶり」との発表が行われた。Squires長官はこの成果を特許審査処理能力の大幅な向上を示す指標として位置づけ、審査積滞削減への取り組みの成果を強調した。審査官の生産性向上とAIツールの活用が積滞解消に貢献しているとされる。

PCTインフォームド審査請求(PIER)パイロット

2026年4月8日には、PCT情報審査請求(PCT Informed Examination Request: PIER)パイロットプログラムが開始された。同プログラムでは、国際段階で先行技術調査が完了している出願について、出願人に対して国際段階の成果物を活用した審査継続・延期・取下のいずれかを選択するよう求める。既存の国際調査報告の活用による審査効率化と積滞解消が主な目的とされている。

実務への示唆

Evans氏は特許品質管理と審査プロセス改善に深い知見を持つ内部昇格型の幹部であり、既存の施策(ASAP!、PIER等)を継続・拡充する方針を引き継ぐと見られる。特許出願人・代理人にとっては、審査処理期間の短縮傾向と並行して、PIER等の新制度への対応が実務上の課題となっている。

Squires長官の就任以降、USPTOはIPR申請制限の強化、§101適格性解釈の再編、審査積滞の大幅削減など、知財政策の構造的な見直しを続けており、今回の人事措置はその体制継続を示すものと言えよう。

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パテント探偵社 編集部

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