特許庁(JPO)は2026年3月23日、「JPOステータスレポート2026」を公表した。同レポートは毎年発行される統計・政策報告書であり、日英両言語で提供されている。今回のレポートは2025年の統計データを主に扱い、特許・商標出願動向、無効審判・異議申立の実績、審査処理期間等の指標を網羅している。
特許出願:10年ぶりの最高水準
2025年の新規特許出願件数は前年比17%増加し、過去10年間で最多を記録した。この急増の主要因は、2025年12月に8.2万件超という異例の集中出願が発生したことにある。出願主体別では、国内企業・機関が全体の80.3%を占め、次いで米国、中国、韓国の順となっている。
一方、登録(特許の成立)件数は2年連続の減少を記録した。登録率は61.7%で前年からほぼ横ばいを維持しており、10年前の51.4%からの漸増傾向を継続している。
審査処理期間
審査処理期間については、通常審査でのファーストアクションまでの平均期間が9.1ヶ月、早期審査は2.3ヶ月、スーパー早期審査は0.9ヶ月となっている。これらの数値は過去数年間との比較で概ね横ばいを維持しており、特段の悪化は見られない。
商標出願
商標出願は2025年に新規出願が前年比6%増、登録件数は2%増を記録した。ファーストアクションまでの平均期間は通常審査で6.8ヶ月、早期審査で1.9ヶ月となっている。
無効審判・異議申立
特許無効審判の請求件数は前年からほぼ横ばいを維持した。前年には請求件数が倍増しており、今回の安定化は注目に値する。商標無効審判の請求件数は10.5%減少した。
特許無効審判の審理件数は133件で、平均審理期間は13.9ヶ月であった。商標無効審判の審理件数は86件、平均審理期間は13.4ヶ月であった。なお、「特許行政年次報告書2025」に基づくと、2024年の特許無効審判において、取下・放棄を除く実質的な審理を経た案件の特許無効率は27%(52件中14件)であり、直近3年間からわずかに上昇している。
AI発明と特許制度の検討
レポート外の動向として、JPOはAIが発明プロセスに関与した場合の発明者認定(inventorship)のあり方についての検討を進めていることが報告されている。同庁は現時点で特定の結論に向けて傾いているわけではなく、幅広いステークホルダーの意見を踏まえた検討段階にある。
12月急増の背景と今後の展望
2025年12月の出願急増(8.2万件超)については、年度内の優先日確保を狙った駆け込み出願の可能性が指摘されている。この集中出願が今後の審査積滞に与える影響については、次回(2026年7月予定)の「特許行政年次報告書」での詳細な分析が期待される。同報告書は日本語のみでの公表が予定されており、英語圏の実務者にとっては今回のステータスレポートが現時点での主要な英語情報源となる。
特許出願件数の急増は、日本の知財政策において引き続き重要な指標として注視される。出願件数の急増が出願品質の向上を伴っているかどうかは、今後の登録率や無効審判動向を通じて検証されることになる。
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パテント探偵社 編集部
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