米最高裁、スキニーラベルと誘引侵害の基準を審理——Hikma対Amarin事件、4月29日に口頭弁論

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米国連邦最高裁判所は2026年4月29日、ジェネリック医薬品メーカーが特許済み適応症を承認ラベルから除外した「スキニーラベル(skinny label)」で製品を販売した場合、ラベル外のマーケティング資材等を根拠に特許侵害の誘引(induced infringement)責任を問えるかどうかを審理する。事件番号24-889、Hikma Pharmaceuticals USA Inc. v. Amarin Pharma, Inc.の口頭弁論が予定されており、判決次第では米国のジェネリック医薬品市場とHatch-Waxman法の運用に広範な影響を与える可能性がある。

事件の背景

本件の中心は、アマリン社(Amarin Pharma)が開発した心臓血管系治療薬Vascepa®(一般名:イコサペンタエン酸エチル)をめぐる特許紛争である。VascepaはFDA(米国食品医薬品局)から二つの適応症について承認を受けている。第一は重篤な高トリグリセリド血症の治療(特許期間が切れた適応症)、第二は心血管疾患リスクの低減(現在も特許保護中の適応症)である。

ジェネリックメーカーのヒクマ・ファーマシューティカルズ(Hikma Pharmaceuticals)は、米国のHatch-Waxman法に基づき、特許保護中の適応症(心血管リスク低減)を承認ラベルから除外した「スキニーラベル」形式でジェネリック品をFDA承認申請した。このカットアウト(carve-out)は、ジェネリックメーカーが特許期間中の適応症を避けつつ非特許適応症のみで市場参入を可能にするための法的枠組みであり、Hatch-Waxman法が想定する正規の手続きである。

連邦巡回区の判断と最高裁受理

アマリンは2020年、ヒクマが発表したプレスリリース(「アマリン社のVascepa®のジェネリック品」と明記)や公開された売上データへの言及が、医師に対して特許保護中の適応症での処方を誘引する行為にあたると主張して提訴した。

連邦地方裁判所(デラウェア州)は当初、アマリンの請求を棄却した。しかし連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は2024年に原判決を覆し、ヒクマのラベル内容とマーケティング資材を総合的に見れば誘引侵害の主張が十分に「合理的な蓋然性(plausible)」を持つと判示した。

最高裁判所は2026年1月16日に上訴受理(certiorari)を決定し、以下の二つの法的問題を審理対象とした。

  • ジェネリック品のラベルが特許適応症を完全にカットアウトしている場合、製品を「ブランド薬のジェネリック版」と称し公開情報を引用するだけで、特許適応症の誘引侵害を主張する訴状として成立するか。
  • 被告が特許適応症の使用を奨励または言及する指示・表示を一切行っていない場合でも、誘引侵害の訴えが成立するか。

双方の主張と法務長官の参加

2026年4月21日に当事者の主張書面(merits briefs)が提出された。ヒクマ側は、特許適応症を完全に除外した適法なスキニーラベルを使用している以上、製品の一般的なマーケティング活動をもって誘引侵害を認定するべきではないと主張する。ジェネリック品は当然、ブランド薬と同じ有効成分を含んでおり、そのような比較は製品説明として不可避であるという論旨である。

アマリン側は、ヒクマが「アマリン社のVascepa®のジェネリック版」と自ら位置づけることで、事実上、特許済み用途(心血管リスク低減)を含む全適応症の代替品として医師に認識させたと反論する。連邦巡回区が採用した「ラベルと外部的言動を総合評価するアプローチ」の正当性が最高裁でも争われる。

注目すべき点として、米国法務長官(Solicitor General)が口頭弁論への参加(分割弁論)を認められた。最高裁判所は2026年3月24日にこれを決定しており、政府が当事者以外の立場から誘引侵害の基準について見解を述べることになる。法務長官の立場は最高裁の判断に一定の影響力を持つとされる。

産業への影響

スキニーラベルは、Hatch-Waxman法上の重要な仕組みであり、先発メーカーが特定の適応症について特許保護を享受しつつ、非特許適応症では早期にジェネリック競争を可能にするものである。この制度はジェネリック医薬品の普及と患者の医療費負担軽減に貢献してきた。

最高裁がCAFCの「総合評価」アプローチを支持すれば、ジェネリックメーカーは製品発表・プレスリリース・セールスプロモーション等の言動に対して従来以上の法的リスクを負うことになり、スキニーラベル戦略の魅力が大幅に低下する。逆にヒクマ側の主張が認められれば、ラベルによるカットアウトに忠実に従う限りジェネリック参入を促進できるという業界の期待に応える形となる。

口頭弁論は4月29日に実施される。判決は2026年6月から7月にかけての会期末までに言い渡される見通しである。

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パテント探偵社 編集部

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