中国CNIPA、過去3年で127万件超の商標出願を拒絶――「フチボール商標」規制強化と商標法改正の動向

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中国の国家知識産権局(CNIPA)は2026年4月23日、国務院新聞弁公室で開催された記者会見において、過去3年間で127万件を超える商標出願を拒絶し、3,300件以上の登録商標を無効化したことを公表した。同日は中国の知的財産権宣伝週間の開幕日にあたり、2025年の知的財産権開発状況を発表する場として設けられた。

CNIPAの芮文彪(Rui Wenbiao)副局長は「商標は商品またはサービスの出所を識別するためのものであり、虚偽または誤解を招く広告ツールとして使用されるべきではない」と述べ、消費者を欺くブランド表示への対応を強化していると説明した。

「フチボール商標」の横行と規制の背景

記者会見では、出願人が登録商標を使って製品の品質・原産地・特性について欺瞞的な表示を行う「フチボール商標(擦边球商标)」の問題が取り上げられた。「フチボール」とは文字通りボールの端をかすめる意味で、法の抜け穴をぎりぎり利用する手法を指す。具体的には、産地や原材料を連想させる名称を商標登録し、実際とは異なる品質・出所を消費者に誤認させるケースが代表例として挙げられる。

CNIPAは対応策として、①欺瞞的商標を防止するための審査指導基準の策定、②積極的なモニタリング体制の整備、③無効審判手続きの迅速化、の3つを実施済みとした。さらに、市場監督管理機関との連携強化を進め、登録後の運用段階でも監視を強めていく方針を示した。

商標法改正の動向

立法面では、中国の商標法改正草案が全国人民代表大会で一読を通過した。改正案には登録商標を用いた誤解を招く表示を対象とする新条項が盛り込まれており、より厳格な罰則規定が設けられる見通しだ。

芮副局長は「欺瞞的商標は短期的な売上増加をもたらすかもしれないが、最終的には消費者の信頼と企業の将来を損なう」と警告した。

中国の商標出願動向:4,980万件の有効登録

2025年末時点で、中国本土の有効登録商標は4,980万件を超えており、世界最大規模の商標登録国としての地位を維持している。一方で件数の急膨張に伴う質の低下や悪意ある出願への懸念も高まっており、今回の規制強化はその是正を目指す取り組みの一環と位置付けられる。

CNIPA は過去数年来、「悪意商標先取り(악意출願)」対策として出願前の実体審査の強化や無効審判の活用を積極的に進めてきた。127万件の拒絶はこうした取り組みの積み重ねによる数値であり、1年間ではなく「過去3年間」の累計として示された点に注意が必要だ。

日本・外資系企業への示唆

中国市場への展開を図る日本企業や外資系企業にとって、この動向は複数の観点から注視すべき内容となっている。第一に、従来から問題視されてきた第三者による商標の無断先取り(ブランドスクワッティング)への対処が進むことで、正当な権利者の地位が相対的に強化される可能性がある。第二に、改正商標法が施行されれば、登録商標の使用に際して誤解を招く表示を避けるための社内審査プロセスの見直しも必要になり得る。

商標法改正草案は現在審議中であり、最終的な施行時期は未定だが、市場における実際の執行は改正を待たずにすでに強化されていることに留意が必要だ。CNIPA主導の取り締まりと市場監督管理機関との連携強化が続く中、中国における商標管理と運用の実務的対応を見直す好機となっている。

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パテント探偵社 編集部

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