米国特許商標庁(USPTO)の内部特許審査プログラムをめぐる透明性問題が、連邦裁判所の証拠開示手続を通じて改めて表面化している。IPウォッチドッグが2026年4月30日付で報じたところによると、Morinville対USPTO訴訟における2026年4月13日の証言台で、OPQA(特許品質担当局)副局長のキャサリン・ブラグドン博士が「大家族出願レビュープログラム(Large Patent Family Review Program: LPFRP)」の実態について証言し、その内容が同プログラムとかつて廃止されたとされる「SAWS」との関連について新たな疑問を提起している。
SAWS(機密出願警告システム)とは何か
SAWS(Sensitive Application Warning System)は、1994年から2015年まで運用されたUSPTOの内部プログラムである。特定の特許出願を「機密性が高い」として審査段階でフラグを立て、査定前に上級管理職による追加審査層を設けることで品質管理を行うというものだった。問題は、このプログラムの存在が出願人に一切開示されず、フラグが立てられた基準も不明確であったことにある。
2015年にUSPTOはSAWSの廃止を発表したが、その後もプログラムの実態については透明性が確保されていないとの批判が業界内で続いていた。
LPFRPとSAWSの「後継」疑惑
今回の証拠開示手続を複雑にしているのは、2025年6月に米国司法省(DOJ)が送付した調査書簡の存在である。同書簡ではUSPTOが「廃止したとされる」SAWSプログラムを2025年においても継続して運用しており、「許可可能な特許出願を秘密裏にフラグ立てして登録を阻止している」との「武器化(weaponization)」を主張する主張が含まれていたとされる。
ブラグドン副局長の証言はこの問題に直接関連するものとみられており、LPFRPがSAWSの機能を実質的に引き継いでいるのではないかという疑念に対する司法的検証が求められている。Morinville対USPTO訴訟における証拠開示争いは、「誰が庁内で何を知っているか、その知識がどのように文書化されているか、内部の品質管理イニシアティブが司法審査に耐えうる十分な透明性を持って運用されているか」という組織ガバナンスの根本的な問題に触れるものだと、法律専門家から指摘されている。
特許実務者への影響と問題の本質
仮にLPFRPがSAWSの後継プログラムとして機能しているならば、特定の出願人や技術分野に対して開示されない形で不利益が生じている可能性がある。特に、大家族出願(多数の関連出願を持つ出願群)を抱える企業にとっては、自社出願がフラグを立てられているかどうかを知る手段がなく、拒絶理由通知の背後にあるプロセスを検証することができない。
この問題は単なるプログラムの透明性問題にとどまらず、行政手続法(APA)上の適正手続き保障の観点からも重要な含意を持つ。USPTO内部の審査フローに隠れた評価層が存在するとすれば、それはデュープロセス(適正手続き)に反するとの主張が成立しうる。
今後の展開
Morinville対USPTO訴訟における証拠開示手続きは継続中であり、ブラグドン副局長の証言内容の全体像は今後さらに明らかになる見通しである。USPTO側がLPFRPの詳細な運用実態を開示するよう裁判所から命じられた場合、その結果は特許実務全体に影響を与える可能性がある。
特許実務者にとって現時点での実務的示唆は、大家族出願に関する審査遅延や異常な拒絶パターンを精査し、記録に残しておくことである。今後の訴訟展開によっては、SAWSまたはその後継プログラムの存在が正式に争点化される局面が来る可能性がある。
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パテント探偵社 編集部
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